2.特区とはどういうものなのか
特区は前述の通り、正式には構造改革特別区域と呼ばれますが、これまで規制等の関係で事業化が困難であった事業を行うことができるよう地域を限定して特別に規制緩和するというものです。このような特区の制度が生まれるきっかけとなったのは、中国の経済特区が経済発展の呼び水となったことにあります。中国では1978年から始まった改革開放政策の一環として経済特区が設置され、そのことによって多数の外国企業が中国に進出することになり、工業・商業・金融業などが大きく発展しました。この中国での成功を受けて、インド・韓国・シンガポール・フィリピンなどの諸外国においても経済特区や保税区などが次々と設置されました。日本においても小泉内閣の構造改革政策の一環として、2003年4月1日に構造改革特別区域法が施行され、正式に国の制度として導入されることになりました。
②特区制度で出来ること
では、この特区制度によってどのようなことが出来るのでしょうか。特区制度の基本は、従来の規制を緩和することにありますが、そのことによって以下のような多岐にわたる分野において事業活動を促進するのではないかと期待されており、一部では既に成果を上げています。(ウィキペディア「構造改革特区」より)。
教育関連
学校の設置や運営を学校法人に限定せず弾力的に運用したり、従来は区分けされていた保育園と幼稚園の仕切りを緩和するなど、育児に関係する多様性を提供する事で、子供を育てやすい環境を実現させる。
物流関連
従来は受け入れ時間の限られていた関税業務を24時間営業とする事で、国際的な物流をノンストップで受け入れられるようにする。また施設面での杓子定規な法規制を緩和し、効率良く経済活動が行えるように便宜を図って、企業や物流拠点としての地位を築く。
国際交流関連
ビザの発給に便宜を図り、海外の研究者や留学生を広く受け入れ、国際文化交流の拠点として振興・発展させる。
農業関連
後継者の居ない農地や休耕田を有効活用し、農業経営企業の設立や運営面で便宜を図って、農業を活性化させ、農業人口拡大を図る。
都市農村交流関連
従来は酒税法で厳格に規制されていたどぶろく等の酒作りと販売の規制や農家民宿に関わる法律(旅館業法など)の規制を緩和し、観光事業の活性化と共に、地域産品の目玉とする事で、観光事業の活性化と同産業従事者の生活安定や後継者の呼び込みを目指す。また、市民農園の開設も促進する。
街作り関連
建設許可の緩和や、逆に違法広告の取り締まり強化など、都市化における不快要素を減らしながら快適な街を作る。更には建設規制を独自に設け、調和した美しい町並みを作り出して、観光資源としても活用する。また都市部で従来は利用が禁止されていた河川流域の遊休地をイベント等で積極的に利用して、住みやすい・美しい街として、人口の拡大を目指す。
エコロジー関連
風力発電や太陽光発電などの新エネルギー利用や、リサイクルの効率化を行い、快適な街作りとともにエコロジー生活を送りやすい地域性で、住人を集める。また原付バイクの二人乗り規制緩和による自家用車の利用削減や電動スクーター(立ち乗りスクーター)などの導入による排気ガス排出量削減(加えて渋滞の解消)を目論む地域も出ている。
行政サービス関連
官民の垣根を無くし、一般企業が利用できる公共サービスを提供する。地方公務員の運用を弾力化して、常務勤の公務員を流動的に運用して、企業誘致に有利な条件を目指す。
福祉関連
老人福祉等で公設の施設を民間企業が運営したり、社会福祉施設に民間からの派遣労働者を受け入れ、現在の慢性的人手不足を解消し、更にはそれらの産業に関わる人や福祉を受ける側の人・その家族による人口の増加を期待する。
医療関連
従来の医療法人一辺倒から、株式会社等の一般企業への病院経営参加を認めるなどして、企業努力による医療向上を目指したり、外国人医師の受け入れを行って、医療技術の向上を目指し、医療先進地域としての地位を築く。一般企業の医療経営参加は、高度美容外科医療分野で第一号が誕生し、脂肪幹細胞移植を実用化している。
産学連携関連
本来なら公道を通行できないロボットを公道で運用したり、ロケット打ち上げに必要な無線などの設備設置に伴う手続き簡略化等、産業分野と大学等の研究者が合同で、実験を行いやすい環境を作る事で学校と企業の誘致を図る